私の知っていた人生


私の知っていた人生は
なかなか素敵なものでした



おじいちゃんと おばあちゃんが
玄関で「また明日ね」と手を振る
ベビーカーから乗り出して
息子は ゆうぐれの街を見つめている
赤紫に光る 都バスの「降ります」ランプ
いちょうの木に 集会中のスズメたち
ガソリンスタンドの 「オーライオーライ」の声

昨日と 何ひとつ変わらないのに
こんな日がずっと ずっと続けばいい
そう強く思ったんだよ

決して逢うことのない
けれども とてもよく知っている友達
あの日の そして いつの日かの友達に
手紙を書くように祈った



私の知っていた人生は
そんな 素敵なものでした