よるのだんち


団地が好きです。


「団地が好き」と言うと、造形的に好き、という意味に取られがちだけど、
私の団地好きは、「独特なデザインの高層階がうんぬん」というようなそれ、ではないです。
「house」としての団地ではなく、断固「home」としての団地なのです。






団地を見ると胸がキューンとなります。
引越をするたびに、my団地を探して、ときおり少し遠くから眺めてはうっとりしてた。
彼らは、建てられた時期が同じであるせいか、日本全国、兄弟のように似た仲間が別の街に建っているのです。


団地の中でも、最も切ないのは、夕暮れ〜夜です。
カーテンの色ごとに、オレンジや赤や緑に光る家々(部屋部屋、という方が適確か)。
まだ薄暗い明け方に、タクシーを飛ばすその窓から見える団地の、ひとつだけ灯りのついた最上階、
どんな人が住んでいるのかな?と想像するだけで、懐かしいような不思議な気持ちになります。




もちろん、マンションの灯りも悪くない。


言うまでもないことですが、私は団地っ子でした。
だから一軒家への憧れがあまり無く、家の中に階段があるとむしろ落ち着かない方です。
階段というのは家の外にあって、私がリビングに居ると、階段を上がってくる音がだんだん近づいてきて、
(あ、お母さんかな…?違った)なんて思うのが好きでした。




そんな母に「灯りのついた団地を見るのが好き過ぎるんだけど、なんでだろう?」と聞いたら


「そこに人がいる、という感じがするからでしょ」


と言われました。







よるのだんち。
そこに人がいる、という、あたたかさ。